実家じまいを進める中で、多くの方が悩まれるのが「仏壇をどうするか」という問題です。
家具や家電と違い、仏壇はご先祖様や故人との思い出が詰まった特別な存在。無理に処分するのは気が引けるけれど、自宅に引き取るスペースがない、宗教的な手続きがわからない……と、立ち止まってしまう方が少なくありません。
特に、実家を売却したり解体したりする際には、期限が迫るなかで仏壇の扱いを決めなければならず、「このままでいいのか」「失礼にならないだろうか」と不安を抱えることもあります。
この記事では、実家じまいで仏壇の取り扱いに悩む方に向けて、下記をわかりやすく解説します。
- 仏壇を処分する前に必ず行うべき供養(魂抜き)
- 主な処分方法と費用相場
- 引き継ぐ・移動する際の注意点
- 後悔しないためのポイント
大切な仏壇を、心を込めて正しく扱えるよう、ぜひ参考にしてください。
豊富な実績を持つ遺品整理の専門店「株式会社ココロセイリ」の代表取締役社長
目次
実家じまいで仏壇が問題になりやすい理由
実家じまいを進めるなかで、「仏壇だけがどうしても決められない」と悩む方は少なくありません。
家財道具や家具はある程度ルールに沿って処分できますが、仏壇は単なるモノではなく、ご先祖様を供養する特別な存在。扱い方ひとつで罪悪感や心残りを抱えてしまうこともあります。
特に、以下のような理由から仏壇の処分や移動は問題になりやすいのです。
思い出や信仰が深く関わるため、迷いや罪悪感が伴う
代々受け継いできた仏壇は、家族の歴史やご先祖様とのつながりを象徴するもの。軽々しく処分できないという思いが強く、決断に時間がかかります。
引き取り先が見つからない、家のスペースがない
自宅に仏壇を移すことを考えても、現代の住宅事情では置き場所に困るケースが多く、引き継ぎが難しいことがあります。
宗教的な手続きが必要で、進め方がわからない
仏壇は処分前に「魂抜き」と呼ばれる供養が必要ですが、どこに依頼すれば良いのか、費用はどれくらいかかるのかが分からず、手が止まってしまう方も少なくありません。
こうした理由から、仏壇の扱いは実家じまいの中でも特に悩ましい問題となりやすいのです。
仏壇を処分する前に必ず行うべき「魂抜き(閉眼供養)」とは
実家じまいで仏壇を処分しようと思ったとき、まず最初に行うべき大切な儀式が「魂抜き(閉眼供養)」です。
仏壇は単なる家具ではなく、ご先祖様の魂が宿る場所と考えられています。そのため、魂抜きをせずに処分してしまうのは、魂ごと捨ててしまうようなものとされ、供養の面でも心情の面でも避けたい行為です。
魂抜きを行わないまま処分するリスク
魂抜きをしないまま処分した場合、ご先祖様の魂をないがしろにしたような気持ちを抱いてしまい、後々まで心残りになる方が多くいます。また、宗派や地域の慣習によっては「礼を欠いた行為」とされることもあるため、トラブルや不安を防ぐためにも必ず魂抜きを行いましょう。
魂抜きを依頼できる先
菩提寺(実家と縁のあるお寺)
もっとも一般的で安心できる方法です。お坊さんが読経を行い、ご先祖様の魂を新たな場所へ移す供養をしてくれます。
僧侶派遣サービス
菩提寺がない場合や遠方の場合は、インターネットから依頼できる僧侶派遣サービスを利用できます。日時や費用が明確にわかるのがメリットです。
仏具店や葬儀社
仏壇の供養を依頼できるケースもあります。処分とセットで対応してくれる場合もあるため、相談してみる価値があります。
費用相場
魂抜きにかかる費用は、お布施やお車代を含めて1万~5万円程度が目安です。依頼先や地域によって幅があるため、事前に見積もりや相場を確認しておくと安心です。
魂抜きは、仏壇をただの家具に戻すための重要なステップです。この手順を踏むことで、心から安心して処分や移動に進むことができます。
仏壇・位牌の処分方法|5つの選択肢と特徴
魂抜きを終えた仏壇や位牌は、家具や遺品と同じように処分できます。しかし、どこに依頼すべきか、費用はどれくらいかかるのか分からず、不安を抱える方も多いのではないでしょうか。
ここでは、主な5つの処分方法を紹介し、それぞれの特徴や注意点をまとめました。
① 自治体の粗大ごみとして処分
最も費用を抑えられる方法が、自治体の粗大ごみ回収を利用する方法です。
費用は数百円~数千円程度で済みますが、魂抜きが終わっていることが前提です。また、大きな仏壇は自力で運び出す必要があるため、体力や人手が必要となる点に注意しましょう。
② 菩提寺に引き取り・供養を依頼
宗派や信仰のしきたりを重んじたい方は、菩提寺に依頼するのが安心です。
お坊さんが正しい手順で供養し、仏壇を引き取ってくれる場合もあります。ただし、ほとんどのお寺は魂抜きのみで、運搬や処分には対応していないことが多く、別途手配が必要です。
費用の目安は5万~10万円程度です。
③ 仏具店や葬儀社に依頼
仏壇を購入したお店や葬儀社に相談すると、処分を受け付けてくれる場合があります。
新しい仏壇への買い替えとセットであれば、処分費用を抑えられるケースもあります。宗派を問わず依頼できる点もメリットです。
費用は3万~7万円が目安です。
④ 不用品回収業者に依頼
家財整理と合わせて一括で仏壇を処分できるため、時間や手間を省きたい方に向いています。
ただし、業者によっては供養を行わずに処分する場合もあるため、魂抜きが済んでいることや「供養に対応できるか」を事前に確認しましょう。
費用は3万~5万円程度からです。
⑤ 供養と処分を一括で行う専門業者に依頼
最近は、仏壇供養と処分を一括で対応してくれる専門業者も増えています。
自宅まで引き取りに来てくれ、提携僧侶による供養を済ませたうえで処分してくれるため、段取りがスムーズです。写真や動画で供養の様子を確認できるサービスもあります。
費用は3万~8万円程度が目安です。
仏壇を処分せず引き継ぐ・移動する場合の選択肢
「できれば処分せずに引き継ぎたい」「実家の仏壇を自宅で守りたい」という方も多いでしょう。しかし、仏壇を移動する際には宗教的な手続きや費用、設置場所の問題など、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは、仏壇を処分せずに引き継ぐ、または移動する場合の選択肢を紹介します。
実家から自宅に移動する際の注意点
仏壇は単なる家具ではなく、先祖の魂が宿る大切な存在と考えられています。
そのため、移動の際には以下の手続きが必要です。
- 移動前に魂抜き(閉眼供養)を行う:仏壇を動かす前に、僧侶に魂抜きをしてもらい、いったん仏壇を物として扱える状態にします。
- 移動後に魂入れ(開眼供養)を行う:新しい設置場所が決まったら、再び僧侶を呼び、魂を戻す儀式を行います。
運搬は、仏壇専門の搬送業者や引っ越し業者に依頼するのが安心です。大型の仏壇は重量があり、分解・梱包が必要な場合もあります。
費用の目安は1〜5万円前後です。
小型仏壇・モダン仏壇への買い替え
自宅に大きな仏壇を置くスペースがない場合は、現代の住宅事情に合った小型仏壇やモダン仏壇への買い替えも選択肢の一つです。
- 上置き型や壁掛け型など、省スペースで設置できる
- インテリアに馴染むデザインが多く、リビングにも違和感なく置ける
- 古い仏壇を引き取り処分してくれる仏具店が多い
小型仏壇に買い替えることで、先祖供養を続けながら、現代の住環境にも対応できます。費用はサイズや材質によりますが、数万円〜20万円程度が一般的です。
仏壇処分にかかる費用相場と内訳
実家じまいで仏壇を処分する際には、「どのくらいお金がかかるのか」が気になる方も多いでしょう。仏壇の処分には、供養費用・処分費用・運搬費用など、複数の費用がかかる場合があります。事前に目安を知っておくことで、後から慌てずに済み、安心して準備ができます。
魂抜き費用:1〜5万円(お布施・お車代含む)
仏壇を処分する前には必ず行う儀式です。お布施やお車代を含めて、以下が一般的な相場です。
- 菩提寺に依頼する場合:1〜5万円程度
- 僧侶派遣サービスや仏具店を利用する場合:2〜5万円程度
※地域や宗派、僧侶との関係性によって金額が変わる場合があります。
処分費用:自治体なら数千円、業者依頼で3〜10万円程度
魂抜きを終えた後、仏壇を実際に処分する際の費用です。
- 自治体の粗大ごみ:数百円〜数千円程度
- 不用品回収業者:3〜5万円程度
- 仏具店や葬儀社:3〜7万円程度
- 供養と処分を一括対応する専門業者:3〜8万円程度
仏壇搬送費:1〜5万円
仏壇は重量があり、自分で運び出すのが難しいケースも多くあります。搬送費用:1〜5万円程度です。(階段作業や解体が必要な場合は追加費用が発生することも)
合計の目安:3〜15万円程度
仏壇処分の合計費用は、依頼先やサービス内容によって大きく変動しますが、以下を目安に考えておくと安心です。
- 安価に済ませる場合(自治体利用):数千円〜1万円程度
- 業者に依頼する場合:3〜15万円程度
相続放棄・空き家問題と仏壇の扱い
実家じまいを進める際、仏壇の扱いが後回しになってしまうケースは少なくありません。特に、相続や空き家の売却が絡む場合、仏壇をどうすべきか悩む方が多いです。ここでは、相続放棄や空き家問題と仏壇の関係について、注意すべきポイントを解説します。
仏壇やお墓は「祭祀財産」として相続放棄の対象外
民法では、仏壇やお墓など先祖を祀るための財産は「祭祀財産」として扱われます。
そのため、たとえ相続放棄をしても仏壇は自動的に放棄されるわけではなく、誰かが責任をもって管理・処分を行う必要があります。
- 相続放棄=仏壇やお墓を一切無視できる、というわけではない
- 管理や処分の負担が残るため、事前に親族間で話し合うことが大切
空き家を売却・解体する際は、仏壇処分が必要になるケースが多い
空き家を売却したり解体する際には、仏壇を残したままにすることはできません。
売却や解体の手続きに入る前に、以下の対応が必要になります。
- 菩提寺や僧侶に魂抜きを依頼
- 仏壇の引き取り先を決める、または処分業者に依頼
- 位牌や仏具も一緒に整理しておく
仏壇の処分が終わらないと、物件の引き渡しや解体工事が遅れることもあるため、実家じまいの初期段階で仏壇の対応を進めるのがおすすめです。
実家じまい前に早めの相談が重要
- 親族間で「誰が仏壇を引き継ぐのか」を早めに決めておく
- 菩提寺や専門業者に相談し、供養と処分のスケジュールを把握しておく
- 相続手続きや不動産の売却スケジュールと並行して進める
こうした準備をしておくことで、「解体や売却の直前になって処分先が見つからない」といったトラブルを防げます。
後悔しない仏壇処分のためのポイント
仏壇の処分は、ただの家具を手放すのとは違い、ご先祖様や家族の思いが深く関わるため、気持ちの整理が難しいものです。後になって「もっとよく考えればよかった」「あの時こうしておけば…」と後悔する方も少なくありません。ここでは、後悔を防ぎ、安心できる方法で仏壇を処分するために大切なポイントをまとめました。
家族・親族で方針を話し合う
仏壇の処分を進める前に、必ず家族や親族と話し合いましょう。
特に、誰が仏壇を引き継ぐか、処分をする場合はどの方法を選ぶかを明確にしておくことが重要です。
- 「思い出があるから残したい」という気持ちを尊重する
- 費用や手間を誰が負担するかを事前に決める
- 兄弟や親族間のトラブルを避けるため、記録を残すのも有効
宗派や地域の慣習を尊重する
宗派や地域によって、仏壇処分の手順や供養の方法が異なります。
たとえば、浄土真宗では魂抜きの考え方がなく、別の法要が必要になることもあります。
- 菩提寺や僧侶に相談し、正しい手順を確認
- 地域の風習や家族の考えを尊重した方法を選択
- 無理に簡略化せず、心を込めて対応することが大切
供養の方法や処分先を複数比較する
仏壇の処分費用やサービス内容は、依頼先によって大きく異なります。
いくつかの寺院・仏具店・専門業者から見積もりを取り、内容を比較しましょう。
- 魂抜きの有無や費用が明確か
- 処分後の対応(写真で供養の様子を確認できるかなど)
- 引き取りや搬出のサポートがあるか
こうした比較を行うことで、安心して任せられる依頼先を見つけやすくなります。
信頼できる専門業者に依頼する
時間的な余裕がない場合や、供養から処分まで一括でお願いしたい場合は、専門業者への依頼が安心です。
専門業者なら、宗教的な手順も含めて対応できるため、スムーズかつ丁寧な処分が可能です。
- 仏壇供養に対応した実績のある業者を選ぶ
- 口コミや評判をチェックしておく
- 契約内容をしっかり確認し、追加費用の有無を把握する
後悔のない仏壇処分のためには、「誰とどのように進めるか」を早めに決め、信頼できる依頼先を選ぶことが何より大切です。
まとめ|実家じまいの仏壇処分は「供養」と「安心できる方法選び」が大切
実家じまいの中でも、仏壇の扱いは多くの方が迷いや悩みを抱えるポイントです。
家具や家電とは異なり、ご先祖様や家族の思いが深く宿る仏壇だからこそ、処分の際には心を込めた対応が必要です。
- まずは家族・親族で方針を話し合い、気持ちを共有する
- 魂抜き(閉眼供養)を行い、仏壇を“物”として扱える状態にする
- 処分方法や依頼先を複数比較し、信頼できる専門家に任せる
この3つを意識すれば、後悔のない仏壇処分ができるでしょう。
近年は、住宅事情やライフスタイルの変化から、仏壇を小型化したり、手元供養を選択したりする方も増えています。大切なのは、ご先祖様への感謝の気持ちを忘れず、自分や家族にとって納得できる方法を選ぶことです。
実家じまいをスムーズに、そして心穏やかに進めるためにも、早めの情報収集と専門家への相談をおすすめします。
豊富な実績を持つ遺品整理の専門店「株式会社ココロセイリ」の代表取締役社長