「田舎にある実家をどうするか…。」
親御さんが施設に入られたり、相続が発生した後に誰も住まない状態が続くと、「このまま放置していいのだろうか」「遠方だから管理も大変」「売るにしてもどう進めればいいかわからない」と悩む方は少なくありません。
実家じまいは、思い出や親族の気持ちが絡むため、なかなか決断しづらいものです。しかし、放置すると建物の劣化や税金の負担、近隣トラブル、行政からの指導など、後々大きな問題になる可能性があります。
この記事では、田舎の実家じまいをスムーズに進めるためのステップや手放し方の選択肢、かかる費用の目安、注意点をわかりやすく解説します。
「何から手をつければいいのかわからない」「後悔しない方法を知りたい」と思っている方に寄り添い、安心して次の一歩を踏み出せるようサポートする内容になっています。
豊富な実績を持つ遺品整理の専門店「株式会社ココロセイリ」の代表取締役社長
目次
田舎の実家じまいが必要になる理由
田舎にあるご実家をどうするか…そのままにしておくか、手放すか、迷っている方は多いものです。特に遠方に住んでいると、管理が行き届かず「何となく置きっぱなし」になってしまうケースも少なくありません。
しかし、放置を続けることで建物の老朽化が進んだり、固定資産税などの維持費がかかり続けるなど、予想以上の負担が発生します。ここでは、田舎の実家じまいを検討すべき主な理由を整理しておきましょう。
田舎の実家を放置するリスク(劣化・特定空き家・損害賠償リスク)
誰も住まない家は驚くほど早く傷みます。通気や掃除ができず湿気がこもることで、カビや害虫が発生したり、老朽化が一気に進むこともあります。
さらに、倒壊の恐れや衛生上の問題がある「特定空き家」に指定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる場合があります。台風などで屋根瓦や外壁が飛び、近隣に被害を与えてしまった際には損害賠償責任を負うリスクもあるため、空き家を放置することは大きなリスクを伴います。
維持費(固定資産税・光熱費・管理費)の負担
住んでいない実家でも、所有している限り固定資産税や都市計画税の支払いが続きます。加えて、電気や水道の基本料金、庭木の剪定や除草作業などの管理費もかかることがあります。
利用しない家に毎年数十万円単位の維持費を払うのは、精神的にも経済的にも負担となりやすいでしょう。
遠方で管理が困難になりやすい
実家が田舎にあり、自宅から遠方の場合は、定期的に通って管理するのが大変です。仕事や家庭の都合で頻繁に足を運べないまま放置され、劣化や不法投棄、害獣被害などが進むケースもあります。こうした「管理の手が届かない状態」が続くと、後で修繕費や処分費がさらに高額になることもあります。
相続時に家族間トラブルを招く可能性
相続が発生した後、「誰が実家を引き継ぐのか」「売却するのか」「費用負担はどうするのか」といった問題が持ち上がることがあります。事前に整理せずに放置すると、親族間で意見が割れてトラブルになることも少なくありません。
実家じまいは、将来の家族間の負担や揉め事を減らすためにも早めに検討しておくことが大切です。
田舎の実家じまいを始めるベストタイミング
「実家を手放すべきかどうか…」「いつ行動に移したらいいのか…」と迷いながら、気づけば何年も経ってしまう方は少なくありません。ですが、実家じまいはタイミングを逃すと手間や費用が大きく膨らむ可能性があります。
特に田舎の家は都市部よりも買い手が付きにくく、老朽化も進みやすいため、早めの判断が重要です。ここでは、実家じまいを検討するうえで意識したいタイミングをご紹介します。
親が施設に入居したとき
親御さんが介護施設や高齢者住宅へ入居した場合、実家に住む人がいなくなり空き家となります。
この時点で実家じまいを進めることで、定期的な管理や維持費の負担を減らせます。親が元気なうちに相談できるため、思い出の品や必要なものを一緒に整理できるのも大きなメリットです。
相続が発生したとき(認知症になる前が理想)
親が亡くなり相続が発生したタイミングも、実家じまいを進めるきっかけとなります。
ただし、親が認知症を発症してからだと、売却や手続きを進める際に成年後見制度を利用しなければならず、複雑で時間がかかります。できれば認知症になる前から家族で話し合いをしておき、将来の方針を共有しておくと安心です。
家の老朽化が進む前
空き家は誰も住んでいない分、劣化が早く進みます。建物が傷んでからでは修繕や解体費用が高額になり、売却価格も下がってしまうことが多いです。
状態が良いうちに売却や貸出を検討することで、スムーズに実家じまいが進めやすくなります。
空き家問題・行政指導が入る前に動く重要性
放置された家は、倒壊の危険性や衛生面での問題から「特定空き家」に指定されることがあります。指定を受けると固定資産税が最大6倍になったり、行政代執行で強制解体され、費用を請求されるケースもあります。
こうしたリスクが表面化する前に、早めに動いておくことが、将来の金銭的負担やトラブルを避けるために大切です。
田舎の実家じまいの進め方【3ステップ】
「実家じまいをしよう」と決めても、どこから手を付けたらいいのか迷う方がほとんどです。
特に田舎の実家は荷物の量が多く、長年住まれてきた分だけ思い出の品も多いため、作業がなかなか進まないこともあります。
ここでは、スムーズに進めるための3つのステップをご紹介します。
① 家族・親族と話し合い、方針を決める
まず大切なのは、家族や親族で実家の今後について話し合うことです。
- 売却するのか
- 賃貸に出すのか
- 解体して土地を活用するのか
- 寄付や無償譲渡をするのか
このような方針を決めないまま進めると、途中で意見がぶつかり、トラブルになりやすくなります。
また、相続登記が済んでいない場合や費用負担の分担、遺品の分配なども、この段階で整理しておくと後の手続きがスムーズです。
② 荷物を整理・処分する
実家じまいで最も時間がかかるのが、家の中にある荷物の整理です。
まずは「必要なもの」「不要なもの」「判断保留」の3つに分けましょう。重要書類や貴重品は、必ず一つずつ確認しながら仕分けます。
遠方の場合は、効率よく進めるために次のような工夫がおすすめです。
- 大型連休など、まとまった時間を確保する
- 事前に不用品回収業者や遺品整理業者を手配しておく
- 兄弟姉妹で分担し、作業を進める
仏壇や位牌など宗教的な品は、菩提寺や専門業者に供養を依頼したうえで処分します。
③ 家をどうするか決めて手続きを進める
荷物の整理が終わったら、家をどうするか最終決定をします。
売却や賃貸を選ぶ場合は、不動産会社に査定を依頼し、複数社を比較すると安心です。
解体する場合は、費用相場や見積もりを確認したうえで信頼できる解体業者を選びましょう。
寄付や無償譲渡を検討する場合は、自治体や専門サービスに事前相談を行い、受け入れの可否を確認する必要があります。
このステップまで来れば、実家じまいは大きく前進します。
田舎の実家を手放す4つの方法と特徴
田舎の実家を相続したものの、「もう住む予定はない」「遠方で管理できない」と悩む方は多くいらっしゃいます。
そんなときに選択肢となるのが、売却・賃貸・解体・寄付といった手放し方です。
ここでは、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
① 売却(仲介・買取)
最も一般的な方法が売却です。
不動産会社に依頼し、買い手を探す「仲介」と、不動産会社が直接購入してくれる「買取」の2つの方法があります。
- 仲介の特徴:市場価格に近い金額で売れる可能性がある反面、買い手が見つかるまで時間がかかる場合があります。
- 買取の特徴:早く現金化できるのが最大のメリット。ただし、仲介より価格は安くなりがちです。
田舎では人口減少や需要の少なさから、売却に時間がかかることも多いです。早めに査定を取り、複数の不動産会社に相談してみましょう。
② 賃貸に出す
「将来的に使う可能性がある」「思い出があるから手放したくない」という場合は、賃貸に出す方法もあります。
- メリット:固定資産税や維持費の負担を家賃収入でカバーできる。
- デメリット:修繕やリフォームが必要になる場合が多く、借り手が見つかりにくい地域もあります。
管理や入居者対応の手間が発生する点も考慮が必要です。管理会社に委託すると手間は減りますが、手数料がかかります。
③ 解体して更地化
古くて住めない家や、買い手がつかない場合には解体して更地にする方法があります。
- メリット:土地として売却や活用(駐車場・資材置き場など)がしやすくなる。
- デメリット:解体費用が必要で、建物があった時より固定資産税が高くなる可能性があります。
解体費用の目安は、木造住宅の場合「坪25,000~40,000円程度」です。まずは複数の業者から見積もりを取り、費用を比較しましょう。
④ 寄付・無償譲渡
「誰も住まない」「売れない」場合は、自治体や個人に寄付・無償譲渡する選択肢もあります。
自治体への寄付は、公共施設や地域活用に使える場合に限られるため、受け入れてもらえないことも多いです。
「0円不動産」やSNSを活用し、個人間で譲渡先を探すケースも増えています。
手放すことで固定資産税の負担をなくせるのが最大のメリットです。
田舎の実家を持ち続ける場合のリスク
「思い出があるから手放せない」「いつか使うかもしれない」と、田舎の実家を持ち続ける選択をされる方も少なくありません。
しかし、住む予定がない家を所有し続けることには、経済的・法律的・生活面でのリスクが伴います。ここでは、特に注意すべき3つのリスクをご紹介します。
空き家の劣化・固定資産税・特定空き家指定
住んでいない家は、人の出入りがないことで劣化が早まりやすくなります。
雨漏りやシロアリ被害、庭の雑草や倒木などが放置されると、資産価値がどんどん下がってしまいます。
さらに、所有しているだけで毎年固定資産税がかかります。
管理が不十分で危険性が高いと判断されると「特定空き家」に指定され、固定資産税が6倍に跳ね上がるケースもあります。
近隣トラブルや損害賠償リスク
管理が行き届かない空き家は、以下のような近隣トラブルを引き起こす恐れがあります。
- 雑草や木の枝が隣家に侵入
- 屋根や外壁が崩れ、第三者にケガを負わせる
- 空き巣や放火など犯罪の温床になる
こうした問題が起きると、所有者が損害賠償責任を問われる場合があります。
相続問題が次世代に持ち越される
田舎の実家を「とりあえず今はそのままに」と放置すると、将来的に相続人が困ることになります。
- 複数人での相続になり、誰も住まないまま放置される
- 固定資産税や管理の負担だけが残る
- 将来売ろうと思ってもさらに価値が下がっている
このように、問題を先送りすると、子どもや親族が大きな負担を背負うことになりかねません。
住まない家を持ち続けることは、経済的・精神的な負担が増えやすいのが現実です。
「もったいないから」「今は決められないから」と先送りせず、早めに実家の今後について考えることが、ご自身と家族のためにも大切です。
田舎の実家じまいにかかる費用相場
「実家じまいをしたいけれど、どれくらいの費用がかかるのか不安…」
こう感じている方は多いのではないでしょうか。実家じまいには、家財道具の処分費用だけでなく、解体や固定資産税など、想像以上にさまざまな費用がかかります。
ここでは、主な費用項目と目安をご紹介します。
家財処分・不用品回収費用:数万円~数十万円
田舎の実家には、長年使わずに残っている家具や家電、思い出の品が大量にあることが多いです。
これらを仕分け・処分するには、専門の不用品回収業者や遺品整理業者を利用するのが一般的です。
- 1軒丸ごとの片付け:20万円~50万円前後
- 不用品の量や階数、搬出状況によって費用は大きく変動
特に仏壇や位牌など、供養が必要なものは別途料金がかかる場合があります。
解体費用:坪25,000~40,000円
住む予定がない家を更地にして土地活用や売却をする場合、解体費用が必要です。
- 30坪の木造住宅の場合:約90万~120万円
- 鉄骨・RC造の場合はさらに費用が高くなる傾向
古い家ではアスベストの撤去費用が追加で発生することもあるため、事前に見積もりを複数業者から取っておくのが安心です。
固定資産税、管理コスト
実家を手放すまでの間も、固定資産税や維持管理の費用はかかります。
- 固定資産税:数万円~十数万円/年
- 除草・清掃・点検の委託費用:1回あたり数千円~数万円
長期間放置すればするほど、負担が積み重なっていく点は見逃せません。
遠方の場合の交通費・宿泊費
田舎の実家じまいで見落としがちなのが、交通費や宿泊費です。
- 車での往復ガソリン代・高速代
- 電車や飛行機のチケット代
- 現地での宿泊費
何度も通うことになれば、これだけで数万円~十数万円が必要になるケースもあります。
以上費用項目ですが、全体の目安としては、「片付け+処分+解体」で100万~200万円前後かかるケースが多く見られます。
早めに準備を進めておくことで、複数の業者を比較でき、不要な出費を抑えられる可能性があります。
田舎の実家じまいをスムーズに進めるポイント
実家じまいは、荷物の量が多く、手続きも複雑なため、思っている以上に時間も体力も使います。
「何から始めればいいのかわからない…」「遠方で何度も通えない…」と不安を感じる方も多いはずです。
ここでは、できるだけ負担を減らし、スムーズに実家じまいを進めるためのポイントをご紹介します。
地元の不動産会社や専門業者に相談
田舎の不動産は都市部と市場の動きが異なるため、地元の不動産会社に相談するのがスムーズです。
- 地域の需要や適正価格を把握している
- 売却、買取、賃貸など最適な選択肢を提案してくれる
- 解体業者や不用品回収業者を紹介してもらえることもある
一括査定サイトを利用し、複数の業者に相談することで、より良い条件を見つけやすくなります。
遺品整理・不用品回収業者を活用
大量の荷物を家族だけで片付けるのは大変です。
プロの遺品整理業者や不用品回収業者を利用することで、作業時間を大幅に短縮できます。
- 分別や搬出をすべて任せられる
- 再利用・買取ができるものは費用を抑えられる
- 大型家具や家電も安全に処分できる
遠方からでも立ち会い不要で作業を進めてもらえるケースもあり、時間的負担が減ります。
相続・登記・税金の専門家(司法書士・税理士)に相談
相続登記や税金の手続きは複雑で、知識がないとトラブルの原因になりがちです。
- 司法書士:相続登記や名義変更をサポート
- 税理士:相続税や譲渡所得税の相談ができる
- 弁護士:家族間での相続トラブルがある場合に対応
早めに専門家に相談することで、手続きをスムーズに進められ、後々の揉め事を防げます。
家族間の事前合意を大切に
実家じまいでは、荷物の分配や家の処分方法を巡って意見が食い違うことも珍しくありません。
- 遺品の分配ルールをあらかじめ決めておく
- それぞれの負担割合(費用・作業)を明確にする
- 不満が残らないよう、全員が納得できる形で進める
「誰かが勝手に決めた」と感じさせないことが、家族関係をこじらせない大切なポイントです。
まとめ|田舎の実家じまいは早めの準備が安心
田舎にある実家は、距離の遠さや荷物の多さ、相続の複雑さなど、思った以上に手間がかかるものです。
「そのうち考えよう」と先延ばしにしていると、気づけば管理が難しくなったり、家の劣化が進んで売却が難しくなったり、家族間で意見が食い違ってトラブルになることもあります。
実家じまいは、できるだけ余裕を持って準備を始めることが大切です。
- 家族全員が納得できる形で方向性を決める
- 早めに荷物を整理し、必要な書類を整えておく
- 地元の不動産会社や専門業者に相談し、最適な方法を見つける
これらを少しずつ進めておけば、心身の負担を大幅に減らせるでしょう。
大切な思い出が詰まった実家だからこそ、放置せずにきちんと整理することで、親御さんの思い出を大事に守りながら未来につなげることができます。
「何から始めればいいかわからない…」と迷ったときは、まずは一度専門家や不用品回収業者に相談してみましょう。
一歩踏み出すことで、実家じまいがぐっと現実的になり、安心して進められるはずです。
豊富な実績を持つ遺品整理の専門店「株式会社ココロセイリ」の代表取締役社長